「同じ練習」をしているようで、実は全く違う。
野球に限らず、どんなスポーツにも強豪チームがあります。
そして、その中からプロになる選手もいれば、全国大会で活躍する選手もいます。
一方で、同じチームで何年も同じ練習をしてきたにもかかわらず、大きく伸びずに競技を終える選手もいます。
同じ監督。
同じグラウンド。
同じ練習時間。
同じメニュー。
それなのに、なぜこれほどまでに差が生まれるのでしょうか。
私は、この問いを考え続けてきました。
もちろん、生まれ持った運動能力や身体能力、いわゆる「センス」が存在することは否定しません。
足の速さ。
反応速度。
身体の柔らかさ。
感覚の鋭さ。
先天的な要素は確かにあります。
しかし、今回私が考えたいのはそこではありません。
もし同じ能力の選手が同じ環境で練習したら、本当に同じように成長するのでしょうか。
私は違うと思っています。
同じ練習をしていても、「何を考えながら練習しているか」は、一人ひとり全く違うからです。
私は、この違いこそが、伸びる選手と伸びない選手を分ける最大の要因だと考えています。
小学生・中学生は「成功体験」が未来を変える
まず、小学生・中学生の時期について考えてみます。
この年代は、多くの場合、自分で環境を選んで競技を始めるわけではありません。
親がやっていた。
兄や姉がやっていた。
友達に誘われた。
近くにそのチームしかなかった。
きっかけは本当にさまざまです。
「将来プロ野球選手になる。」
そんな強い覚悟を持って競技を始める子どもは、それほど多くありません。
つまり、この年代は「たまたま始めた」という偶然からスタートすることがほとんどです。
だからこそ面白い現象が起こります。
同じチームで、
同じ監督に教わり、
同じ量の練習をしているにもかかわらず、
少しずつ実力に差が生まれていくのです。
私は、この年代は「身体で覚える黄金期」だと思っています。
理論を理解することよりも、
何度も繰り返し体を動かすこと。
その中で偶然成功し、
「できた!」という感覚を身体が覚える。
この積み重ねが急激な成長につながります。
言い換えれば、この時期は"成功体験を積み重ねるフィーバータイム"なのです。
しかし、その成功体験を手にする選手と、そうでない選手では、やがて決定的な差が生まれます。
「楽しい」の意味が違う
ここで私は、一つの分岐点があると思っています。
それは、「何が楽しいのか」です。
野球そのものが楽しい。
友達と練習するのが楽しい。
バットを振ることが楽しい。
もちろん、それも素晴らしいことです。
しかし、一方でこんな選手もいます。
「もっと打てるようになりたい。」
「試合で活躍したい。」
「レギュラーになりたい。」
「勝ちたい。」
つまり、「成功すること」が楽しい選手です。
この違いは、とても大きい。
成功したい選手は、練習中の一球にも意味を持たせます。
監督の話を聞く姿勢も変わります。
なぜこの練習をするのか。
どうすればもっと上手くなるのか。
次は成功できるだろうか。
そんなことを考えながら練習しています。
一方で、「ただ練習をすること」が目的になってしまう選手は、言われたことを形だけ繰り返します。
同じバットを振っていても、
同じノックを受けていても、
頭の中で起きていることは全く違います。
私は、小学生・中学生で最初に生まれる差は、ここにあると思っています。
「野球をすること」が楽しいのか。
「上手くなること」が楽しいのか。
どちらが正しいという話ではありません。
しかし、伸びる選手に共通しているのは、目の前の楽しさではなく、その先にある成功を想像しながら練習していることです。
幼いながらにも、「結果」を思い描き、そのために今日の一球を積み重ねる。
この積み重ねが、やがて誰にも埋められない差となって表れてくるのだと、私は考えています。
高校・大学で伸びる選手は、「練習の質」よりも土台が違う
高校・大学になると、競技環境は大きく変わります。
小学生・中学生のように「たまたま近くのチームだった」という選択ではなく、自分の意思で進学先を決められるようになるからです。
全国を目指す強豪校へ進む選手。
自分と同じレベルの仲間が集まるチームを選ぶ選手。
試合に多く出場し、中心選手としてプレーしたい選手。
それぞれが自分なりの目的を持ち、環境を選択します。
つまり、この時期になると、チーム内の能力差は小学生・中学生ほど大きくありません。
同じような実績を持つ選手が集まり、同じような指導を受け、同じ練習をしています。
それでも、数年後には圧倒的な差が生まれます。
なぜでしょうか。
私は、この時期の成長を左右する要素は四つあると考えています。
「怪我をしないこと」「フィジカル」「頭脳」「リーダーシップ」です。
まず一つ目は、怪我をしないことです。
これまで多くのスポーツ経験者と話をしてきましたが、一番よく耳にする言葉があります。
「レギュラーだったけど、怪我で終わった。」
「プロも目指せると言われていたけど、怪我がきっかけで競技を辞めた。」
どれだけ才能があっても、どれだけ技術があっても、プレーできなければ成長は止まります。
だから私は、怪我をしないことも立派な技術の一つだと思っています。
身体のケアをすること。
疲労を理解すること。
無理をする時と休む時を判断すること。
それも競技力の一部なのです。
二つ目は、フィジカルです。
レベルが上がれば上がるほど、身体能力の重要性は増していきます。
同じ技術でも、最後はスピードやパワーが勝敗を分ける場面が多くなります。
だから伸びる選手ほど、練習だけではなく食事や睡眠、ウエイトトレーニングまで含めて競技だと考えています。
技術だけを磨くのではなく、「その技術を発揮できる身体」をつくることに時間を使うのです。
三つ目は、頭脳です。
この頃になると、多くの選手はある程度フォームが固まり、成功体験も積んでいます。
だからこそ、さらに成長するためには「考える力」が必要になります。
なぜ今日は打てなかったのか。
どうすれば少ない力で大きなパワーを生み出せるのか。
相手は何を狙っているのか。
ただ力任せにプレーするのではなく、身体の使い方や試合の流れを理解し、理にかなった動きを追求できる選手ほど、大きく飛躍していきます。
私は以前の記事でも書きましたが、一流の世界には大きく二つのタイプがいます。
圧倒的なパワーで相手をねじ伏せる選手。
そして、頭脳と技術で相手を翻弄する選手です。
どちらも一流ですが、共通しているのは「考え続けている」ということです。
そして最後が、リーダーシップです。
これは、自分よりレベルの低い環境を選んだ選手に特に重要な力だと思っています。
自分が一番上手いからといって、自分だけが活躍する選手になるのか。
それとも、仲間を成長させ、チーム全体を強くする存在になるのか。
この差は非常に大きい。
本当に伸びる選手は、自分の技術だけで評価されようとはしません。
周囲を動かし、チーム全体の力を引き上げることにも価値を見出します。
その経験は、競技人生だけでなく、社会に出てからも必ず生きる財産になるのです。
伸びる選手に共通するのは、「楽しさ」の捉え方だった
ここまで、小学生・中学生、高校・大学という二つの時期に分けて考えてきました。
年代ごとに成長の要因は変わります。
小学生・中学生では、成功体験を積み重ねながら身体で覚えること。
高校・大学では、怪我をしない身体づくり、フィジカル、頭脳、そしてリーダーシップ。
それぞれの時期で求められるものは確かに違います。
しかし、私はどの年代にも共通する「伸びる選手の本質」があると思っています。
それは、常にその先の成功を見据えて練習していることです。
同じ素振りを100回する。
その100回を「今日のノルマ」と考える選手もいます。
一方で、「試合で打つために何か一つでも感覚をつかもう」と考えながら振る選手もいます。
同じ100回でも、その価値はまったく違います。
同じノックを受けても、「早く終わらないかな」と思っている選手と、「この一球で試合を変えられる選手になりたい」と思っている選手では、吸収するものが変わります。
つまり、練習量だけではなく、練習の目的が成長を決めているのです。
私は指導者として、多くの選手を見てきました。
その中で感じるのは、伸びる選手ほど「なぜ」という問いを持っていることです。
なぜこの練習をするのか。
なぜ今失敗したのか。
なぜあの選手は成功したのか。
そして、どうすれば自分もできるようになるのか。
この問いを持ち続ける選手は、指導者から教わるだけではありません。
自分自身で考え、学び、成長していきます。
だから環境が変わっても伸び続けられるのです。
一方で、「言われたことをやる」だけの選手は、環境が変わった瞬間に成長が止まります。
指示がなければ動けない。
答えがなければ考えられない。
それでは競技レベルが上がるほど苦しくなってしまいます。
私は以前から、「本質を理解すること」の大切さを発信しています。
これは野球も全く同じです。
フォームだけを真似ても、本質は身につきません。
一流選手の練習メニューだけを真似ても、一流にはなれません。
大切なのは、「なぜその練習をしているのか」「何を身につけようとしているのか」を理解することです。
本質が理解できれば、自分で応用できます。
環境が変わっても、自分で考え、修正し、さらに成長できます。
だから私は、指導者にも伝えたいことがあります。
選手に練習を与えることも大切です。
技術を教えることも大切です。
しかし、それ以上に大切なのは、「この練習にはどんな意味があるのか」を伝えることではないでしょうか。
選手が目的を理解した瞬間、練習は「やらされるもの」から「自ら取り組むもの」へ変わります。
そして最後に、この記事の問いへ戻ります。
なぜ同じ練習をしているのに、伸びる選手と伸びない選手がいるのか。
私の答えはシンプルです。
伸びる選手は、目先の「楽しい」を追いかけていません。
その先にある成功や成長を思い描きながら、今この一球、この一振りに意味を持たせています。
「練習が楽しい」のではなく、「上手くなることが楽しい」。
この違いは、一見すると小さな差に見えるかもしれません。
しかし、その積み重ねは一年後、五年後、十年後には、埋めることのできない大きな差になります。
伸びる選手とは、特別な才能を持った人だけではありません。
未来の自分を想像し、そのために今日の行動を変えられる人。
私は、そんな選手こそ、本当の意味で伸びる選手なのだと思います。
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